PF009(0484)


考察:光合成系からの遅延発光、化学発光(CIEEL)は等温系からのエネルギー抽出可能性を示す

櫻井英博1,2; 1神奈川大・光合成水素生産研、2早稲田大・理工総研

J. C. Maxwellは思考実験において、デモンの介在による等温系からのエネルギー抽出の可能性を論じたが、これは熱力学の第二法則に反することである。のちに、L. Szilardは、デモンがエネルギーを抽出できたとしても分子に関する情報のエントロピーを考慮すると正味のエネルギー生産は不可能だと指摘した。しかし、以下の現象1)、2)はデモンの介在なしに等温系からエネルギー生産が可能であることを示している。1)前照射した光合成系からの遅延発光(Strehler et al. (1951), J Gen Physiol 34:809)。 藻類、光化学系粒子等は、光照射後、電子受容体側には還元された成分(A-)が一時的に生じ、電子供与体側には酸化された供与体(D-)が生じる。続く暗所で、A-、D+の一部は光を発して基底状態に戻り(光経路)、他は光を発せず熱となって基底状態に戻る(暗経路)。2)電荷移動に起因する化学発光(CIEEL)。化学発光する一部のジオキセタン類については、反応物と生成物と熱力学的諸量の値が推定される(例:O'Neil al. (1970), JACS 92:6553)。一部化合物の発光では、光エネルギーは暗経路により発生する熱エネルギーを上回る。以上の例において、発光に必要な残余のエネルギーは、等温の反応系に由来すると考えられる。

詳細: Explanation: Maxwell's Demon (英語)